フルマラソン完走などをキッカケとして、「もっと長い距離を走ってみよう」とウルトラマラソンを目指す方は多いはず。しかしフルマラソンと同じトレーニング方法では、もしかしたらウルトラマラソンは完走できないかもしれません。実際にフルマラソンでサブ3.5やサブ3を達成しているランナーが、ウルトラマラソンをDNF(途中棄権)したという話は私自身も聞いたことが何度もあります。ではウルトラマラソン完走を目指すに当たり、どのようなトレーニングが必要なのか。私自身の経験を踏まえながら、おすすめのトレーニング方法をご紹介しましょう。なお、本来ならば42.195kmを超えるものを全てウルトラマラソンと呼びますが、ここではもっともポピュラーな100kmマラソンをターゲットとしています。「速く」ではなく「長く」走る練習一般的に考えれば、フルマラソンも十分に長い距離です。しかしウルトラマラソンはそれすらも上回り、100kmマラソンであれば倍以上に及びます。ただし距離が長い分だけ、走るペースは遅くなるのが必然。そのため、「ゆっくり長く走る」練習が有効でしょう。例えば100kmマラソンは14時間制限という大会が多いですが、8:00/kmペースで走れば完走できます。このペースだけを見ると、もしかしたら楽に感じるかもしれません。しかし8:00/kmとはいえ、14時間ずっと走り続けるのは想像以上に大変なこと。ウルトラマラソンの大会を見ると分かりますが、後半には大勢のランナーが走れなくなり、歩いてゴールを目指しています。そこで、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)のような練習を中心に行ってみてください。できれば練習段階から、50~60kmなどフルマラソンを超える距離を走ってみることをおすすめします。最初はタイムを気にせず、休憩を入れたり歩いたりしても構いません。まず「長時間にわたって動き続ける」ことに慣れましょう。私もよくウルトラマラソンの練習として、仲間と60kmのLSDを行いました。後述しますが、これを通じて“長く走るためのコツ”も掴めてくるはずです。アップダウンなど変化の多い道を走る河川敷のような場所で開催される場合を除き、ウルトラマラソンではアップダウンが多くなりがちです。これは距離が長くなるほど、フラットコースの確保が難しいから。中には、アップダウンの過酷さを特徴に打ち出している大会もあります。そのため、アップダウンに慣れておくこと、上り・下りの走り方を身につけておくための練習を行いましょう。慣れについてはLSDやジョギング等からでも、できるだけアップダウンの多いコースを選んで走ること。長い距離が取れなくても、短い坂道を何往復もすれば効果が期待できます。あるいは上りなら、傾斜を設定したトレッドミルを走るのも良いでしょう。走り方については、以下の点を意識してみてください。上り力まずリラックスする腰を落とさず、真っすぐな前傾姿勢を維持目線は前方に向け、ストライドを短めに足を上げ過ぎないようにするピッチが上がり過ぎないようリズムを意識腕をしっかり振り、その力で身体を上前方へと引き上げるようなイメージ下り力まずにリラックスする地面に対して身体が垂直に近くなるよう前傾姿勢を維持する踵を上げて重心移動による推進力を使って進むストライドを広げ過ぎない水平移動を意識して上下動を抑える食べながら走る練習フルマラソンと比べて倍以上にもなる距離を走るとなれば、当然ながら必要なエネルギーも比例して増えます。またエネルギー以外に、例えば水分・電解質の補給もより必要性が高まるでしょう。そのためウルトラマラソンでは、エイドステーション(給水所)に食べ物が用意されていることが少なくありません。あるいはエネルギー切れなどの対策として、補給食を持って走るランナーも多く見られます。ウルトラマラソンを完走するには、“食べながら走る”ことが大切です。しかし普段、食べてすぐ走ることはほとんどないでしょう。慣れていないとお腹が重く感じたり、痛くなったりして走りに影響が生じかねません。そのため、「食べて走る」練習を行っておきましょう。大量に食べるのではなく、少しずつ食べながら長い距離を走ってみるのがおすすめです。補給食については、スポーツショップに行くと実にさまざまな種類が販売されています。しかし形状や触感、味なども多様なため、好き嫌いが分かれるところです。また、ウルトラマラソンでは後半になると胃腸も疲れてくるでしょう。よく「固形物を受け付けない」という声が聞かれますが、ジェルや飲み物などは疲労状態でも受け入れやすいはず。状態に応じて使い分けられる、自分に合ったものを見つけておくと安心です。ストップ&ゴーで走る前述の通り、ウルトラマラソンではエイドステーションに食べ物などが用意されています。その他、中間地点に荷物をドロップし、着替えやアイテムの補充・入替などが行える大会も少なくありません。そのため、走っている最中に“立ち止まる”ことが多くなります。走っているリズムを止め、また走り始める。一見すると、休憩できるので楽に思えるかもしれません。しかし慣れていないと、この繰り返しが足への負担を増幅させます。後半になるといったん止まったのは良いものの、そこから走り出せなくなるということも。そのため、例えば5km毎に休憩を挟みながら走るLSDなどを行い、ストップ&ゴーに慣れておきましょう。なお、エイドステーションでの休憩は完全に立ち止まるのではなく、ウォーキングを取り入れるのもおすすめです。エイドステーションが見えたらペースを落とし、歩きながら食べ物・飲み物を受け取る。そして歩きながら食べ、食べ終えたら(コップなどはゴミ箱に捨てたら)ゆっくり走りに移行して少しずつペースを戻す。私も実際に行っている方法ですが、立ち止まるより疲労が蓄積しにくくなります。最後まで気持ちを切らさない100kmを中心としたウルトラマラソンを完走するために、おすすめのトレーニング方法などをご紹介しました。ウルトラマラソンは距離が長いだけでなく、その特徴に応じた対策が必要です。しかしもっとも大切なのは、やはり「最後まで気持ちを切らさない」こと。それだけ走れば疲れるのは当然ですし、距離が長いほど不測の事態が起こりやすくなります。すべてを受け入れ、むしろ楽しむくらいの気持ちを持ち続けられれば、きっとウルトラマラソン完走を果たすことができるでしょう。