前回は「ピッチ走法」について、そのメリットやデメリット、具体的にピッチを上げるためのトレーニング方法をご紹介しました。これに対し、今回取り上げるのは「ストライド走法」です。ストライドとは“歩幅”を意味し、ランニングにおいてはよく「ストライドを伸ばせ」「ストライドを広げろ」といったアドアイスが飛び交います。詳しくトレーニング方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。ストライド走法とは?メリットとデメリットストライドは1歩あたりの歩幅を表し、ストライド走法はこの歩幅を広くして走るものです。同じ距離を走った場合、ストライドが広い方が歩数は少なくなります。ただし、無理に歩幅を広げようとすると、ジャンプするような走りになるでしょう。その結果、むしろ非効率になるだけでなく、脚への負担が増えてしまいます。そのため、十分に脚の筋力が備わっている方に向いた走法です。歩数が少なければ、それだけ地面に着地する回数が減ります。着地衝撃は疲労の大きな要因ですので、その機会が減ることはストライド走法のメリットと言えるでしょう。また、同じ力でより遠くへ足を運べる(歩幅が広くなる)ようになれば、当然ながらその分だけタイム短縮も期待できます。ただしストライド走法は余計な筋力を使ってしまったり、上下動が生じやすくなったりすることが多いので注意してください。上下動が大きければ、1回あたりの着地衝撃も大きくなるなどデメリットがあります。そのため、あくまでも無駄のないスムーズなストライド走法の獲得が大切です。ストライドを広げるためのトレーニングストライド走法のトレーニングは、「脚の筋力」と「腰と股関節部の可動域」の2点で考えましょう。筋力は備われば力強い走りが生まれ、蹴り出しの力からストライドが広がります。一方で筋力が変わらなくても、股関節部の可動域が広がれば、自然とストライドも比例して広がっていくのです。ここでは、具体的なトレーニング方法を4つご紹介します。1. バウンディングジャンプ動作によって、自然と大きくストライドを広げて前方へ動くことになります。また、筋力アップの効果も期待できるトレーニングです。ただし脚への負担が大きいため、連日など高頻度の実施は控えるようにしてください。手順脚を肩幅程度にして立つ両腕を大きく振り上げて、上体をやや反らせる両腕を振り下げながら膝を曲げて腰を落とす両腕を思い切り前方に振り上げ、両足で地面を押して遠くへジャンプする片足ずつ交互に着地し、地面を跳ね返すようにして遠くへジャンプする注意点腰を落とした際は膝が前に出過ぎないよう、お尻を後方下に引き下げるようにする着地は瞬発的に、リズムよくジャンプする(ボールがバウンドするようなイメージ)腕を大きく振って全身を使って動く上下に動かず平行移動で遠くに動くよう意識する手順1~3を助走動作に置き換えても良い2. ウィンドスプリント「流し」と呼ばれるもので、全力走に対して70~80%程度のスピードで走ります。慣れないうちは30~40m程度から始めましょう。全力疾走ではないので、自身の動きにも意識が向けやすいはずです。一般的に走るペースが落ちるほど、ストライドも狭くなります。そのため、ある程度スピードを出しながら、大きなフォームを意識して走ることで、ストライドを広げる感覚が養えるでしょう。このトレーニングは単体だけでなく、ジョギングなどの練習後に2~3本加えるだけでも効果的。スピード強化にも繋がります。注意点腕振りを含め、上半身をしっかり動かすストライドを広げるため、着地後は脚を後方に伸ばすように意識するへそ下付近から身体が斜め上前方に引き上げられているような意識で走る3. ランジウォークゆっくり、股関節を前後に広げながら歩くトレーニングです。可動域を広げられ、即効性もあるのでウォーミングアップ時に行うのもおすすめ。慣れてきたら階段など段差を使ったり、リズムを付けてみたりするのも良いでしょう。手順脚を肩幅程度にして、つま先を前に向けて真っすぐ立つ右足を大きく前に広げて置く右足が着地したら膝を90度程度に曲げて身体を下ろす身体を下ろしたら、右足で地面を押して身体を持ち上げる膝が伸びて片足立ちの状態になったら、ゆっくり左足を前方に広げて置く同様の動作を左足で行い、これを交互に繰り返しながら進む注意点股関節を伸ばすために、後ろ足は膝を伸ばすようにする上体が前かがみにならないよう、地面に対して垂直を維持する走る動作に繋げるため、腕振り動作も行う勢いをつけず、ゆっくり大きく行う4. アニマルウォーク(リザード)動物の動きを模して行うトレーニング「アニマルウォーク」。この中で、「リザード」は股関節の柔軟性を高めることで、ストライドを広げる効果が期待できます。なお、アニマルウォークは他にも種類があり、それぞれ異なる効果がありますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。手順両手を地面につき、身体を持ち上げて頭から脚までを一直線の状態にする右手と左足を地面から離し、それぞれ一歩前に進める(右では右肩のやや斜め右上、左足は腰の横辺りに位置するようにする)右手と左足が地面につくと同時に、両肘を曲げて身体を低くする今度は逆に、左手と右足を同様にそれぞれ一歩前に進めるこれを繰り返しながら前に進む注意点股関節を大きく広げるように意識する顔をあげて床ではなく前方を見る右手と左足、左手と右足が、それぞれ同時に動く(同時に着地する)ようにするストライドの広さを確認しながら効率的にトレーニング特に「もっと速く走りたい」と考えている方は、ストライドを広げることが現状打破のポイントになるかもしれません。ここでご紹介した内容を参考に、ぜひトレーニングに取り組んでみてください。時間がない場合は片足立ちの状態で、反対側の脚を大きく前後に振るような動作もおすすめ。私も、よくレース本番のスタート前に行っています。ストライドの状態を確認しながらトレーニングすると、さらなる効果アップが期待できるでしょう。スマートシューズEVORIDE ORPHEはセンサーを搭載し、走っている際のストライドをデータで可視化してくれます。少しずつストライドが広がっていることを実感できれば、よりトレーニングにも意欲的に取り組めるはずです。ストライド以外にも多様なランニングデータが取得でき、レベルアップに向けたの相棒になってくれるでしょう。