走り方を考えるうえで、「ピッチ走法」と「ストライド走法」をいう言葉がよく挙がります。ランニング指導を受けたことがあれば、「ピッチを上げろ」「ストライドを伸ばせ」などと声を掛けられたことのある方は多いでしょう。しかし頭の中でなんとなくイメージできていても、具体的に何をすれば良いのか、どのような走法を目指すべきなのか、十分に理解できていないかもしれません。この「ピッチ走法」と「ストライド走法」について、それぞれ詳しく解説します。まず今回はピッチ走法について、ピッチを上げるためのトレーニング方法を合わせてご紹介しましょう。ピッチ走法とは?メリットとデメリットピッチとは1歩あたりに要する時間のこと。そしてピッチ走法は、この時間を短くする走り方です。その分だけ脚の回転が速くなり、歩幅が小さくなります。トレーニングやレース中、他のランナーを見て「脚の動きが早いな」と感じたことがあるかもしれません。まさに、それこそがピッチ走法です。なお、股関節の可動域が狭い方はストライドが伸ばせないため、意図せずピッチ走法になっていることがあります。ピッチ走法は小さな動きで素早く走ることになるため、着地した際に受ける衝撃(=脚への負担)を押さえやすくなります。筋力が弱い方、筋疲労による後半失速を改善したいという方は、ピッチを上げることで改善できるかもしれません。また、足首や膝などが痛みやすい方は、ピッチ走法にすることでこれを軽減できる可能性があるでしょう。ただしピッチ走法は、通常より素早く何度も脚が回転します。これに合わせて腕振りも早くなることから、心拍数が上がりやすくなる点に注意してください。その結果、早く体力を消耗しやすくなる可能性があります。また、疲れてくると腕振りがピッチの速さに追いつかなくなり、動きがバラバラで非効率になるかもしれません。ピッチを上げるためのトレーニング素早く脚を動かすと聞けば、さほど難しく感じないかもしれません。しかし実際にやってみると、思ったより大変だということが分かります。意識するだけでもある程度はピッチを上げられますが、動きに無理が生じ、かえって走りが非効率化してしまうかもしれません。そのため、しっかりトレーニングに取り組み、ピッチ走法のための土台をつくりましょう。ここでは具体的に5つのトレーニング方法をご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。1. ツイストジャンプピッチを速めるには、脚だけでなく腰回転をしっかり使うことが大切です。そのため、捻りを取り入れた素早いジャンプを行います。一瞬の着地で回転方向を切り替え、腰から左右の脚を動かす意識で行いましょう。手順脚を肩幅程度にして立つジャンプしたら腰を捻って着地着地したらすぐに反発し、再びジャンプして反対側に腰を捻るこれを繰り返しながら前方へ進む注意点脚は動かさず、あくまで腰回転のみで動く着地は瞬発的に、素早く左右への腰回転で動く上半身は回転方向に向かず、前を向いたまま維持する力まずリラックスして行うやや前傾になることで重心移動を生み出し、これによって前に進む2. ヒールアップ走る動作は簡単に表すと、「離地→踵が上がって回転→膝が前に出る→着地→離地」の繰り返しです。ピッチを上げる際には、「踵が上がって回転」の動作を素早く行うことが求められます。そのため、ヒールアップ(踵を引き上げる)にも取り組んでみましょう。手順脚を肩幅程度にして立つ手のひらを外側へ向けてお尻の後ろに置く真っすぐな姿勢を保ったまま膝を曲げ、踵を上げる上がった踵で手のひらを打つようにしながら、少しずつ身体を前傾にして進む注意点踵を上げる際、膝が前に出ないようにする腰を曲げたり反らせたりしない踵は素早く上げる地面を蹴らず、前傾にした際に生じる重心移動によって前に進む3. 腿上げ先に取り上げた走る動作のフローのうち、「膝が前に出る→着地」の動作を素早く行うためのトレーニングです。いわゆる腿上げですが、メトロノームなどでリズムを作り、これに合わせて(慣れてきたら少しずつ早める)動くと行いやすいでしょう。手順脚を肩幅程度にして真っすぐ立つリズムに合わせて左右交互に腿を上げる腿を挙げた際には、同時に腕振り動作も行う長々と行わず、30秒など短い時間で早さを意識して行う(数セット反復)注意点膝は腰の高さまで、上がった際は90度を目安に曲げる腿を上げた際につま先が下がらない(足首も90度を目安)ようにする視線は前に向けて真っすぐな姿勢を保つできるだけ上下動を押さえる四肢を連動させ、手足が同時に動くよう意識する早さを重視し過ぎて動作が小さくならないようにする(大きく早く動く)連続して行うのが難しいときは「1・2・3」で止めるなど動きを確認しながら行う4. 下り坂走下り坂を走ることで、平地では出せない素早い動作が行えます。しっかりスピードを出して疾走しましょう。オーバースピードトレーニングとして、走力アップも期待できる内容です。ただし、回転が上がると心拍も上がります。また、回転に身体が追いつかず転倒するといったことも考えられるでしょう。スピードの出し過ぎには注意し、最初は短めの坂道で反復して行うようにしてください。5. 自転車漕ぎスポーツバイクを持っている方は、ぜひトレーニングに活用しましょう。1分間をとにかく全力で漕いだり、一定の素早いリズムで限界まで漕ぎ続けたり。自転車漕ぎ(バイクトレーニング)も、ピッチを上げるのにおすすめです。ただし通常の自転車では、ペダルを“押す”動作しかできません。これだと、ランニング時の回転とは違ってしまいます。そのため、ビンディングでペダルとシューズを固定する、もしくはペダルにトゥークリップを装着してつま先が引っかかるようにしてください。そうすれば自転車を漕ぐ際に“引く”動作が加わり、よりランニングにおけるピッチ向上のトレーニング効果が高まります。なお、ビンディングやトゥークリップを用いると、慣れるまで転倒などの危険があるでしょう。これは停止する際、通常なら離れるはずの脚がペダルから離れないためです。最初は公園など安全な場所で慣れるところから始める、もしくは室内で固定ローラーやバイクマシンを使うなどすることをおすすめします。走る際はピッチを確認して効率的にトレーニングす。両者を上手く両立させる、ハイブリッドな走法を目指すのも一つの方法でしょう。ここで取り上げた内容を参考に、まずはピッチ走法を試して自分に合っているかどうか確認してみてください。せっかくトレーニングするなら、感覚だけに頼らずピッチの状態を確認しましょう。スマートシューズEVORIDE ORPHEはピッチ等のデータを可視化できるセンサーを搭載し、かつ、シューズとしても高い機能を持ちます。トレーニングを継続することで上がっていくピッチをデータで見れば、成長を実感することでモチベーションも高められるでしょう。ピッチ以外にもさまざまなランニングデータが取得できるので、レベルアップに向けた良きパートナーになってくれるはずです。