ランナ-膝と言われるほど、ランニング時に起こりやすい「腸脛靭帯炎」。皆さんも、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?ご自身はもちろん、ランニング仲間が腸脛靭帯炎に悩まされている…という方も多いかもしれません。故障で膝の外側に出る場合、その痛みの多くはこの障害によるものです。そもそも腸脛靭帯とは、骨盤を構成する腸骨からスネの脛骨上部を結ぶ靭帯のこと。この靭帯は膝を曲げ伸ばしする際、膝の外側に突き出している大腿骨外側上顆を乗り越えて前後に移動します。その摩擦が過度になると、炎症を起こしてしまうんです!腸脛靭帯炎の特徴は、接地した瞬間より、そこからの体重移動や踵の蹴り上げ動作時に痛みが出るという点でしょう。軽度のものならば 5~10km程度のジョギング が行えますが、重度になると歩行時にも痛みを起こすことも少なくありません。ここでは多くのランナーが悩まされがちな「腸脛靭帯炎」について、その原因や解決法について具体的に解説していきます。現在痛みがある方もない方も、ぜひ予備知識として参考にしてください!腸脛靭帯炎が起きる5つの原因と解決法 1. ランニングフォーム不良接地から蹴り出し動作の間に膝が内側に入る「ニーイン」。この傾向が顕著なほど腸脛靭帯に負荷がかかって緊張が増し、骨との摩擦が強まります。 走っている際は気づきにくいですが、一度確認してみてください。解決法まずは「ニーベントテスト」で、ランニングの際に接地から蹴り出しの間に膝が内側に入る「ニーイン癖」がないかチェックしましょう!手を腰に当てて、つま先は正面で片足立ちになります。そのまま、支えてる側の足を膝が90°に曲がるまで腰を落としてください。このとき、膝が真っすぐ正面に曲がれば問題ありません。ただし内方向に向いてしまうようだと要注意!ランニング時にも、腸脛靭帯に負担かけるフォームである可能性が高くなります。ニーイン癖の傾向がある場合、臀部筋力強化やストレッチによる内転筋の柔軟性向上、あるいはインソールの使用が有効です。また、「腰割り」のエクササイズもおススメ!筋肉の強化や内転筋の柔軟性向上、足元のアンバランス解消に繋がり、ニーイン癖がある方にはうってつけです。以下手順に沿い、ぜひ実践してみましょう。両足を肩幅より若干広めにして立ち、つま先は外側を向けます足元は足の小指で地面をつかむように立ち、これは終始キープしてください上体を真っすぐ地面に垂直にしたまま、腰をゆっくり下ろしていきましょう膝が直角になるまで下ろしたら、5秒キープしてまたゆっくり上げていきます注意点お尻が後ろに突き出ないよう気を付けましょう膝はつま先と同じ方向に曲げ、内側へ入らないようにしてください 足の小趾が使えていないと、膝が内に入りやすくなるので意識しましょう ランニング直前に20回ほど行ってからスタートするよう習慣づけると、走行時に下半身の安定感が増し、腸脛靭帯炎になりにくいフォームが身に付きます。ぜひ取り組んでみてください!2. 急な走行距離の増加靭帯の緊張度合いには、靭帯の上部前方に付着する大腿筋膜張筋と後方に付着する大殿筋が関わります。いきなり走る距離や頻度を1.5倍、2倍など過度に増やすと、筋疲労の蓄積に回復が追い付きません。その結果、大腿筋膜張筋や大殿筋の緊張増加に伴って靭帯の摩擦が増します。例えば10kmレースからハーフマラソンへ、ハーフマラソンからフルマラソンへと出場レースがより過酷なものに移行する…。そんなタイミングでは、トレーニング量の急な増やし過ぎで腸脛靭帯炎に至る方が多いようです。解決法練習量の増加を、前月から10~20%程度に留めましょう。そうすれば、故障のリスクを抑えつつ走力アップが見込めます。同時に筋緊張を解消するため、大腿筋膜張筋や大殿筋のストレッチも行ってくださいね。 3. 骨格バランスの不良O脚や回内足など骨格のゆがみがあると、ランニング時に腸脛靭帯へ負担がかかりやすくなります。解決法骨格自体に問題がある場合、筋力トレーニングだけでは予防効果がは薄いでしょう。そのため、矯正用インソールの使用が有効です。4. ランニング環境の不具合左右に傾斜のある路面を走ると下肢全体のたわみ、ねじれが起こって膝の負担が増えます。アスファルトのような硬い路面、特に下り坂を走るのことは特に筋肉や靭帯へのダメージが強く、腸脛靭帯炎などの故障リスクが上がります。解決法公園や河川敷など、できるだけ傾斜の少ない道を選んで走りましょう!路面はアスファルトより、土や芝生の上が負担が少なくておススメですよ。5. 不適切なシューズの使用サイズが合っていない、踵部分がフィットしていない等。足元の不安定さは、そのまま膝の不安定につながって故障の原因になります。一度、自分のシューズをチェックしてみましょう!解決法シューズサイズは実際の足で測った際、踵後端からつま先までの長さにプラス 1cm程度が目安!試し履きするときは、必ず荷重をかけた状態でサイズ感を確認しましょう。また、体重の増減でも、荷重をかけた際のサイズ感が変わるので要注意。シューズの形状は、以下に該当するものがおススメです。踵後部に当たるカウンター部分に、横から軽く掴んでもたわまない硬さがあるつま先部分は、曲げこんだとき足趾の付け根部分で曲がるねじれに強い痛みが出たら、恐らく多くの方が治療院などへ向かうのではないでしょうか?しかしどんな良い治療を施して治しても、原因がわかっていなければ再発します。そのため、腸脛靭帯炎を発症したら、なぜ痛めたのか原因を考えましょう!治療・リハビリと原因解決 腸脛靭帯炎が起きた場合、発症から治癒までの期間は長ければ3か月以上と、他のランニング障害に比べて時間がかかることが多いでしょう。なお、腸脛靭帯炎の治療は大腿筋膜張筋や大殿筋の緊張緩和、損傷部位の回復促進を目的としたマッサージ、鍼治療、ストレッチ、筋膜リリース、温熱療法などが中心になります。ランニングを行えるかどうかは、歩行や階段昇降など日常動作で感じる痛みを基準に判断しましょう。痛みがなければ体操やウォーキングなどで、身体を温めてからジョギング程度の運動をおススメします。ただし、膝の痛みや違和感が出ない範囲の距離で走ってください。必要以上の安静は、かえって治癒までの期間が長引いたり、復帰後に元の体力・筋力に戻すのに時間がかかったりしてしまいます。腸脛靭帯炎を起こしにくくするためには、やはり根本的な原因の解決が重要です。例えばORHE TRACK で、足首の内方への傾きを示すプロネーションの数値を見てみてください!これが15°以上の場合、接地から蹴り出しにかけて膝が内に入るニーイン傾向の可能性が高く、腸脛靭帯の摩擦ストレスが起こりやすいでしょう。また、接地時の足首角度が 15°以上だと膝への衝撃も強くなり、これも故障の原因になります。腸脛靭帯炎を繰り返し起こしており、これら数値が当てはまる方は、ランニングフォ ームの修正で改善が見込めるはずです。