ORPHE TRACKを履くと、走りに関わるさまざまなデータが可視化されます。しかし、いくらデータを見たところで、これを日々のトレーニングに上手く活かせなければ意味がありません。また、正しくデータを読み取ってトレーニングに繋げなければ、かえってパフォーマンスを低下させるなどマイナスになる可能性もあるでしょう。私は自身のトレーニングだけでなく、パーソナルトレーニング等にもORPHE TRACKを活用しています。ORPHE TRACKを履いて実際に走ってもらい、取得データを見ながらデータの意味やそこから読み取れる情報を説明。皆さん「そういうことなのか」と驚かれます。そして改善点を確認して必要なトレーニングを行うことで、“違い”を実感されるようです。ここでは皆さんが目標達成を果たせるよう、ORPHE TRACKの具体的な活用方法について詳しく解説します。データをどのように読み解き、日々のトレーニングにどう活かせば良いのか。2回に分けてお伝えしますので、参考にしてください。まずは各データが何を表しているのか理解するプロネーションや着地位置、ストライドの長さなど。ORPHE TRACKで取得したデータを見ると、中には聞いたことのない用語があるかもしれません。また、言葉は知っていても、その意味を十分にできていない方は多いでしょう。なんとなくの理解ではなく、まず知識として頭に定着させることが大切です。ここで簡単に、アプリ上で確認できる主要なデータについて解説しておきます。なお、いずれもORPHE TRACKでは左右それぞれのデータを取得できますが、左右差が大きいと非効率な走りになったり、怪我を起こしやすくなったりする可能性があるので注意してください。※各データの説明についてはORPHE Inc.の監修です。着地(HEEL/MID/FORE)走る運動は、片足ずつ交互に地面と接地を繰り返します。このとき重要なのが、「まず足裏のどの部分が地面に接しているのか」ということ。ORPHE TRACKでは「HEEL(ヒールストライク)」「MID(ミッドフット)」「FORE(フォアフット)」の3つに分け、全体的な傾向と合わせて走行時にも随時状態を確認できるようになっています。どの着地位置が望ましいのかは様々な見解がありますが、それぞれの特徴等については以下記事で解説していますので参考にしてください。ランニングに最適な着地は?ミッド、フォア、ヒールの特徴とオススメの着地法プロネーション足首の傾きを示しています。骨格の歪みや足首の緩さなどにより、「オーバープロネーション(過内回)」か「アンダープロネーション(過外回)」の状態になっている方が少なくありません。プロネーションに異常があると怪我を引き起こす恐れがあるほか、着地反発が上手く前方への推進力に変換できなくなります。なお、プロネーションについては以下記事で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。怪我の原因はプロネーションかも?ランナーが覚えておくべき「プロネーション」の基礎知識ストライド(高さ/長さ)ストライドの長さは「歩幅」を表し、つまり1歩でどれだけの距離を移動できるかという数値です。ストライドが伸びると1歩でより遠くへ進むため、スピードアップが期待できます。さらに同じ距離でも着地回数が減る(=着地衝撃を受ける頻度が減る)ことで、筋疲労も抑えられるようになります。なお、ストライドは反発力を高めるだけでなく、特に股関節部の柔軟性を高める(可動域を広げる)ことでも伸ばすことが可能です。ストライドに関して、「高さ」を意識したことのある方は少ないかもしれません。これは、つまり足が地面から離れたのち、どれだけの高さまで上がっているかを示します。走る際には着地後に足が後ろに伸び、膝が曲がって踵が上がることで回転運動が発生。この回転は高い推進力を生み出すのにとても重要で、通常はスピードが上がるほどこの回転も大きくなります。もしストライドが低い状態で走っていれば、この回転運動が上手く活用できていない可能性が高いでしょう。ピッチスピードを上げるための要素として、ストライド(長さ)と共によく取り上げられるのがピッチ。これは歩数を表し、ピッチ数を上げる(=早く足を動かす)走り方を「ピッチ走法」を呼びます。ストライドを伸ばすよりは、恐らく容易に取り組みやすいスピードアップ方法でしょう。ピッチ走法では足を大きく回転させず、離地したらすぐ次の着地動作へ移ります。ピッチを上げるほど手足をより多く(かつ素早く)動かすことになるため、心肺への負担も増してしまうものです。また、ピッチの速さには限界があるため、より上の速さを目指すならピッチ走法は向かないかもしれません。接地時間足が着地してから、離地するまでに要する時間です。これが長いということは、つまりそれだけ足が長い時間にわたり身体を支えているということ。特に長距離では後半になると、重心が落ちて身体が沈み込んでしまうため接地時間が長くなりがちです。また、左記に取り上げた「着地」ではFORE →MID→HEELの順に長くなるでしょう。着地反発を上手く利用して接地時間を短くできれば、それだけ足の筋肉を使う時間が短くなります。つまり接地時間を短くできれば、効率的で疲れにくい走りに変わっていくはずです。着地衝撃力着地した時に地面に伝えられているパワーの大きさです。着地衝撃力が大きいほど、大きな推進力を得られるので、ストライドも自然と伸びていきます。また体の重心の前で着地をしているランナーは、地面を踏み込む力が弱く、着地衝撃の値も小さくなる傾向があります。そのため、大きな推進力を得るためにも重心の真下で着地をすることが大切です。一方で、着地衝撃が大きいほど、地面からの反発を受け止めるための強い筋力も必要です。着地衝撃力に対して筋力が伴わなければ、すぐに疲労するだけでなくランニングフォーム が崩れたり、怪我をしたりする可能性もあります。「評価」から優先順位をつけるランニングフォームを改善しレベルアップを目指すなら、どこから着手するか優先順位をつけましょう。何でもかんでも一度に直そうとすると、結果的に上手くいかないものです。そもそもトレーニング時には走ること(あるいは筋トレなどの動作も含む)に集中する必要があり、その中で改善したい部分・動きを意識しなくてはいけません。1つ1つ、優先順位に従って課題をクリアしていきましょう。なお、例えばストライドが伸びることで接地時間も短くなるなど、一緒に複数の課題が改善されることも少なくありません。どうしても並行して改善していきたいなら、毎日トレーニング毎に「今日は着地位置を意識する」などポイントを決めて取り組みましょう。この優先順位を考えるうえで、指針に活用できるのが「評価」です。ORPHE TRACKアプリの「評価」では「脚力」「安定性」「反発力」「左右バラランス」「接地安全性」をA~E評価でグラフ化し、総合評価と共に前述した各データについてもA~Eに分けて評価が見られます。また、ランニングフォームについて改善点もコメントされますので、評価情報をもとにもっとも影響の大きいポイントから着手しましょう。一度の結果だけで判断しないORPHE TRACKを有効活用するなら、まずは“今の状態”を知ることから始めましょう。ただし走る場所や体調、身体の疲労具合などによってデータは違ってきます。また、「データを取っている」と意識するあまり、普段通りの走りができないかもしれません。そのため、できれば同じ状態・場所を複数回走ってください。信号があるとストップ&ゴーでフォームに影響が出やすいので、止まらずに走れる周回コースが理想です。決して「データを取るから上手く走ろう」なんて、余計なことは考えないこと。もしあまりに飛び抜けて異なるデータが出ている場合は、無視した方が良いかもしれません。おおむね3~5回程度のデータを取得したら、総合的に見て現在の走りがどうなのか確認します。ORPHE TRACKで取得できるデータを頭に入れ、自分自身の状態を確認したらスタートラインです。優先順位に従って、実際に改善へ向けたトレーニングを進めましょう。ただしトレーニング時にも、いくつかORPHE TRACKを最大限に活用するためのポイントが。次回は、より実践的な活用方法をご紹介します。アンバサダーに学ぶ!スマートシューズ ORPHE TRACK の活用方法 後編オススメの記事スマートシューズでランニング革命を - ORPHE TRACKプロダクトマネージャー 平野賢インタビューランニング効率を高めるためには、まずは「着地」を改善しよう。Trippers Running ClubでORPHE TRACKの体験会を実施しました