ランニングでは、下肢の筋肉を重視して考える方が少なくありません。走り込みはもちろん筋力トレーニングでも、下半身をメインに鍛えるといったケースは多いでしょう。逆に上半身については、あまり意識していないという声も聞かれます。しかし、ランニングは全身運動です。速く、あるいは効率的に走りたいのであれば、上半身を含めた身体全体の使い方がとても重要になります。その中でも特に重視したいのが“体幹”。体幹トレーニングという言葉はよく耳にしますが、これはランニングでも効果的です。ここでは体幹を使って走ることについて、そのメリットや具体的な走り方、トレーニング方法などを解説します。体幹って何?そもそも、体幹とは何を意味するのでしょうか。これは簡単に言うと、全身の中で頭と四肢を除いた胴体部分を示します。その名の通り「体の幹」となるもので、姿勢維持や安定した動作などに欠かせません。よく「インナーマッスル」(深部の筋肉)という言葉が登場しますが、これがイコール体幹であるように思われている方もいるでしょう。特に体幹トレーニングと聞くと腹部を鍛えるものとイメージする方は多いようです。しかし、インナーマッスルも体幹に含まれる筋肉ではありますが、あくまで構成要素に過ぎない点に注意してください。よく体幹を鍛えると話すと「腹筋なら鍛えている」と答えるランナーがいますが、それだけで十分とは言えません。体幹を使って走るメリットそれでは、体幹を使うことでランナーにどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは具体的に、3つ取り上げて解説します。1. 前傾姿勢を維持して効率的に走れる身体を前傾させることで、重心移動による前方への推進力が得られます。さらに腰の位置を高く保てば、ランニング時に下半身へ掛かる負担が軽減されるでしょう。結果、疲労しにくい効率的な走りに繋がります。体幹が弱いと前傾姿勢や腰位置が維持できず、下半身に頼った走りとなるでしょう。疲労が溜まって後半に失速したり、走れなくなったりする原因になります。また、前傾姿勢が保てないと体が起き上がり、着地するごとに上下動が大きく生まれがちです。上に跳ねたような走りとなり、着地時に“落ちる”ことで下半身への負荷も上がってしまいます。体幹を使って前傾姿勢を維持すれば、この上下に働いている力も前方向への推進力にできるのです。2. 大きな腕振りでダイナミックに走れる肩胛骨周りの筋肉を鍛え、かつ柔軟性を高めることで、大きな腕振りができるようになります。腕振りの動きは腰、そして足へと連動しているため、結果的に全身を使ったダイナミックなランニングフォームの獲得へと繋がるでしょう。3. 体を安定させてくれる体幹を使うことで、身体がブレにくくなります。例えば前方向へ進むランニングにおいて、体が左右に動くのはとても非効率的です。パワーロスが大きく、まさに“もったいない”状態と言えるでしょう。また、中には体が安定せず、左右いずれかに偏って走っている人もいます。この場合、一方のみに掛かる負荷が大きくなり、怪我の原因になりかねません。体幹をしっかり使えばランニング中に体が安定し、下半身への負担が少なく効率的に走ることができます。体幹を使って走るとは?腰が曲がらず高い位置を保っており、前傾姿勢になっていること。また、左右への動きが少なく、腕が大きく振れていて腰回転を使えていることなどが“体幹を使って走っている”状態と言えます。横から見ると平行移動に近く、前後から見て真っすぐな状態が保てていることが理想。腰が曲がったり落ちたり、無駄に体が大きく揺れている場合は体幹が使えていません。走っている最中は自分の動き1つ1つに目を向けて、状態を確認しましょう。体幹が使えているか否かの判断を適切に行うためには、日頃から走りを客観的にチェックすることが大切です。例えば動画を撮影したり、誰かにランニングフォームを見てもらったり。「体幹を使えているとき、自分はどのように走れているのか」をトレーニング段階から知ることで、走りながらの間隔でも、現在体幹が使えているかどうかを分かるようになります。あるいはORPHE TRACKやEVORIDE ORPHEを履いて走り、データから読み解くのも一つの方法です。前傾姿勢が維持できず上下動が大きくなると着地衝撃が高くなりますし、腕が触れていないとストライドも狭くなってきます。どの時点でどういう状態だったのかを後から見直すことで、体幹を使って走れているのか、ペースや距離によって維持できる程度がどうなのかが確認できるでしょう。具体的なトレーニング方法最後に、体幹を使って走れるようにするためのトレーニング方法をご紹介します。すぐ実践できるものばかりですので、ぜひ取り入れてみてください。片足立ち真っすぐな姿勢で立ちます片足を膝と股関節が90度程度になるまで挙げましょうそのまま体が動かないよう片足のまま姿勢を維持します※足元にクッションなどを置いて不安定にすると、より効果的ですプランク両腕の肘から先、そして両足のつま先のみを床につけて体を支えます頭から足までが一直線になるよう姿勢を作りましょう30~40秒程度を目安に姿勢をキープしてください※腰が曲がったり背中が反ったりしないように注意します※慣れてきたら片足を挙げたり、片腕を挙げたりするのも効果的ですサイドプランク床へ横向きに寝ます下側になる腕の肘から先を、手のひらが前方にくるようにしてつけます両足を揃え、片足と片腕だけで支えながら体を浮かせます足から頭までが一直線になるよう姿勢を作りましょう30~40秒を目安に姿勢をキープし、反対側でも同じように行います※反対の腕は上にあげると体のブレを意識しやすくなります※慣れてきたら、上になっている足を少し挙げてみるのも効果的ですダイアゴナル両手両足を肩幅程度にして四つん這いの姿勢になります右腕と左足を真っすぐな位置まで同時に上げましょう5~10秒を目安にキープしたら、ゆっくり元に戻します反対側でも同じように行ってください※手足を戻す際、肘と膝がつくよう体の下で引きつけてから戻すとさらに効果的です(アームレッグクロスレイズ)マウンテンクライマー両手を肩幅程度にして床につきます片足を膝から両手の方に引きつけましょうしっかり引きつけたら足を床につきます腿上げのように素早く脚を入れ替え、今度は反対足で同じように動作しますこれをリズムよく繰り返してください※動的な体幹トレーニングのため有酸素運動としての効果も期待できます